FP1級過去問題 2018年9月学科試験 問6

問6

社会保険の給付に係る併給調整や支給停止に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 健康保険の傷病手当金の支給を受けるべき者が、同一の傷病により障害厚生年金の支給を受けることができるときは、傷病手当金の支給を受けている間、障害厚生年金は減額支給となる。
  2. 業務中に死亡した労働者の遺族が、遺族厚生年金と労働者災害補償保険の遺族補償年金の支給を受けることができるときは、遺族補償年金の支給を受けている間、遺族厚生年金は減額支給となる。
  3. 厚生年金保険の被保険者が、特別支給の老齢厚生年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付の支給を同時に受けることができるときは、特別支給の老齢厚生年金は、在職支給停止の仕組みに加えて、毎月、最大で標準報酬月額の15%相当額が支給停止となる。
  4. 障害基礎年金および障害厚生年金の受給権者が、65歳到達日に老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給権を取得した場合、当該受給権者は、「障害基礎年金と障害厚生年金」「老齢基礎年金と老齢厚生年金」「障害基礎年金と老齢厚生年金」のいずれかの組合せによる年金の受給を選択することができる。

正解 4

問題難易度
肢16.9%
肢29.5%
肢317.0%
肢466.6%

解説

  1. 不適切。健康保険の傷病手当金の支給を受けるべき者が、同一の傷病により障害厚生年金の支給を受けることができるときは、傷病手当金の全部または一部が支給停止されます。支給調整されるのは障害厚生年金ではなく傷病手当金です(健保法108条3項)。
    健康保険の傷病手当金の支給を受けるべき者が、同一の傷病により障害等級3級の障害厚生年金の支給を受けることができるときは、当該障害厚生年金の額を360で除して得た額が傷病手当金の1日分の額よりも少ない場合、その差額が傷病手当金として支給される。2022.9-5-1
  2. 不適切。同一の事由により、国民年金または厚生年金から給付される遺族・障害年金と、労災保険から給付される障害補償年金・遺族補償年金・傷病補償年金が併給される場合には、労災保険からの給付が下記の割合減額されることになっています(労災保険法別表第一)。遺族厚生年金は満額支給されるので本肢は誤りです。
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    業務災害により死亡した労働者の遺族が、労働者災害補償保険の遺族補償年金と遺族厚生年金の支給を受けることができるときは、遺族厚生年金の支給を受けている間、遺族補償年金は減額されて支給される。2022.9-5-2
  3. 不適切。65歳未満の者が、特別支給の老齢厚生年金と高年齢雇用継続給付を同時に受けている場合には、在職老齢年金の仕組みに加えて、最大で標準報酬月額の6%相当額(61%未満に減収時)が支給停止となります(厚年法7条の5)。15%ではありません。
    厚生年金保険の被保険者が、特別支給の老齢厚生年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付の支給を同時に受けることができるときは、特別支給の老齢厚生年金は、在職支給停止の仕組みに加えて、毎月、最大で標準報酬月額の6%相当額が支給停止となる。2021.1-5-2
    Dさん(62歳)が特別支給の老齢厚生年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付を同時に受けられる場合、特別支給の老齢厚生年金は、在職支給停止の仕組みに加えて、毎月、最大で標準報酬月額の15%相当額が支給停止となる。2016.1-3-4
    厚生年金保険の被保険者が特別支給の老齢厚生年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付を同時に受けられる場合、特別支給の老齢厚生年金は、在職支給停止の仕組みに加えて、毎月、最大で標準報酬月額の6%相当額が支給停止となる。2015.9-5-4
  4. [適切]。公的年金の併給関係は以下のようになっています。老齢×障害の組み合わせでは「老齢基礎年金と障害厚生年金」のみ選択できませんが、本肢の組み合わせはいずれも選択することができます。
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    ※「老齢基礎年金と障害厚生年金」が併給できない理由としては、障害等級1級・2級であれば障害基礎年金を選択したほうが常に有利なので老齢基礎年金との併給を認める合理的な根拠がないこと、障害等級3級の障害厚生年金は単体として受給することを前提として最低保障額があるので併給になじまないことなどがあると思われます。
    障害基礎年金および障害厚生年金の受給権者が、65歳到達日に老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給権を取得した場合、当該受給権者は、「障害基礎年金と障害厚生年金」「老齢基礎年金と老齢厚生年金」「障害基礎年金と老齢厚生年金」のいずれかの組合せによる年金の受給を選択することができる。2022.9-5-4
したがって適切な記述は[4]です。