FP1級過去問題 2019年9月学科試験 問22

問22

国内ポートフォリオ運用におけるパフォーマンス評価に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 資本資産評価モデル(CAPM)におけるβ(ベータ)値は、市場全体に対するポートフォリオのアンシステマティック・リスクを測定した値である。
  2. トレイナーの測度は、資本資産評価モデル(CAPM)により算出される収益率に対するポートフォリオの超過収益率により、ポートフォリオの運用成果を評価する手法である。
  3. ジェンセンの測度は、安全資産の収益率に対するポートフォリオの超過収益率をポートフォリオの標準偏差で除したものにより、ポートフォリオの運用成果を評価する手法である。
  4. インフォメーション・レシオ(情報比)は、ベンチマークの収益率に対するポートフォリオの超過収益率をトラッキングエラー(超過収益率の標準偏差)で除したものにより、ポートフォリオの運用成果を評価する手法である。

正解 4

問題難易度
肢19.0%
肢214.4%
肢313.5%
肢463.1%

解説

ポートフォリオ運用におけるパフォーマンス評価で問われる5つの手法について押さえて覚えておきましょう。
資本資産評価モデル(CAPM:キャップエム)
●投資家の期待収益率=安全利子率+β×(市場全体の期待収益率-安全資産利子率)
β=対象資産のリスク感応度、ポートフォリオのシステマティック・リスク
ジェンセンのアルファ(ジェンセンの測度)
●ポートフォリオの収益率-CAPMの期待収益率
ポートフォリオのパフォーマンスを理論上の期待収益率と比べて評価する
トレイナー・レシオ(トレイナーの測度)
●(ポートフォリオの収益率-安全資産利子率)÷β
βによるリスク当たりの超過収益率の大きさを表す
シャープ・レシオ(シャープの測度)
●(ポートフォリオの収益率-安全資産利子率)÷ポートフォリオの標準偏差(σ)
標準偏差による単位リスク当たりの超過収益率の大きさを表す
インフォメーション・レシオ(情報比)
●(ポートフォリオの収益率-ベンチマークの収益率)÷トラッキングエラー
ポートフォリオとベンチマークの収益率の差(アクティブリターン)を得るためにどの程度効率的だったかを表す
※超過収益率の標準偏差
  1. 不適切。β値は、ポートフォリオ分散によって消去できない市場全体のリスク(システマティック・リスク)を測定したものです。アンシステマティック・リスクは分散投資によって低減されるリスクを示すので誤りです。
    資本資産評価モデル(CAPM)におけるβ値は、市場全体の動向と資産の動向との相関関係を示し、システマティック・リスクを表す指標である。2023.9-21-2
    資本資産評価モデル(CAPM)におけるβ(ベータ)値は、市場全体に対するポートフォリオのアンシステマティック・リスクを測定した値である。2019.1-21-2
  2. 不適切。トレイナーの測度は、安全資産利子率に対するポートフォリオの超過収益率を資本資産評価モデル(CAPM)のβ値で除して求めます。本肢は、ジェンセンの測度に関する説明です。
    トレイナー・レシオ(トレイナーの測度)は、「資本資産評価モデル(CAPM)による期待収益率-ベンチマークの収益率」をポートフォリオのβ(ベータ)で除して、βによるリスク1単位当たりの超過収益率を測定するものである。2024.5-23-2
  3. 不適切。ジェンセンの測度は、ポートフォリオの期待収益率から資本資産評価モデル(CAPM)の期待収益率を差し引いた値です。本肢は、シャープレシオに関する説明です。
  4. [適切]。インフォメーション・レシオ(情報比)は以下の算式で求めます。主にアクティブ運用のパフォーマンス評価に用いられ、アクティブリターンを得るための効率性を表します。
    ポートフォリオの収益率-ベンチマークの収益率トラッキングエラー(超過収益率の標準偏差)
    インフォメーション・レシオ(情報比)は、「ポートフォリオの収益率-ベンチマークの収益率」をトラッキングエラー(超過収益率の標準偏差)で除して算出される。2024.5-23-4
    トレイナーの測度は、ベンチマークに対するポートフォリオの超過収益率を、トラッキングエラー(超過収益率の標準偏差)で除して求める。2016.1-21-a
    インフォメーション・レシオ(情報比)は、ポートフォリオの収益率からベンチマークの収益率を差し引いた超過収益率を、CAPM(資本資産評価モデル)で算出されるポートフォリオのβ(ベータ)で除して求める。2014.9-22-2
したがって適切な記述は[4]です。