FP1級過去問題 2022年5月学科試験 問44

問44

民法における遺言に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  1. 相続人が自筆証書遺言を発見し、家庭裁判所の検認を受ける前に開封した場合、その遺言は無効となる。
  2. 自筆証書遺言を作成した遺言者が、その遺言内の記載について加除その他の変更を加える場合、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
  3. 公正証書遺言を作成する場合、証人2人以上の立会いが必要であるが、遺言者の推定相続人および受遺者ならびにこれらの配偶者および直系血族は、この証人になることはできない。
  4. 公正証書遺言は、原本が公証役場に保管されており、遺言者が公正証書遺言の正本を破棄したとしても、遺言を撤回したものとはみなされない。

正解 1

問題難易度
肢179.1%
肢211.2%
肢36.4%
肢43.3%

解説

  1. [不適切]。自筆証書遺言が家庭裁判所の検認を受ける前に開封された場合でも、その遺言の効力は失われないため無効とはなりません。検認は、遺言書の形状、日付、署名など遺言書の内容を明確にして偽造・変造を防止するための手続きで、遺言の有効・無効を判断するものではありません。ただし、検認前に開封した者は5万円以下の過料に処されます。
    相続人が自筆証書遺言を発見し、家庭裁判所の検認を受ける前に開封した場合、その遺言書は無効となる。2014.9-44-4
  2. 適切。自筆証書遺言について加除その他の変更を加える場合、遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して署名し、その場所に印を押さなければその効力を生じません。
    自筆証書遺言を作成した遺言者が、その遺言内の記載について加除その他の変更を加える場合、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。2020.9-45-2
  3. 適切。公正証書遺言を作成する場合、証2人以上の立会いが必要になります。遺言内容と利害関係の深い遺言者の推定相続人および受遺者、これらの配偶者や直系血族、未成年者等は証人になることはできません。
    公正証書遺言を作成する場合、証人2人以上の立会いが必要であるが、遺言者の兄弟姉妹は、遺言者の推定相続人または受遺者でない者等であっても、この証人になることはできない。2020.9-45-3
    公正証書遺言を作成する場合、証人2人以上の立会いが必要であるが、遺言者の推定相続人および受遺者ならびにこれらの配偶者および直系血族は、この証人になることはできない。2019.1-44-1
    公正証書遺言の作成にあたって遺言執行者を指定する場合、遺言者の推定相続人および受遺者を遺言執行者とすることはできない。2018.1-46-1
    公正証書遺言の作成時、遺言者の兄弟姉妹は、遺言者の推定相続人または受遺者でない者であっても、証人となることができない。2016.1-44-1
    公正証書遺言を作成する場合、証人2人以上の立会いが必要であるが、遺言者の推定相続人は、この証人になることはできない。2014.9-44-3
  4. 適切。公正証書遺言を作成すると公証役場に原本が保管され、遺言者には正本(原本と同じ効力をもつ写し)が交付されます。正本は写しにすぎませんから破棄したとしても遺言を撤回したものとはみなされません。公正証書遺言の内容を撤回するときは、新たに遺言書を作成しなければなりません。
    公正証書遺言の遺言者が、公正証書遺言の正本を故意に破棄したときは、その破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされる。2024.9-45-1
    公正証書遺言を作成していた遺言者が、公正証書遺言の内容に抵触する自筆証書遺言を作成した場合、その抵触する部分については、自筆証書遺言で公正証書遺言を撤回したものとみなされる。2023.1-44-3
    公正証書遺言の遺言者が、公正証書遺言の正本を故意に破棄したときは、その破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされる。2019.1-44-3
    遺言者が公正証書による遺言書を作成した場合、その遺言を自筆証書遺言により撤回することができる。2014.9-44-2
したがって不適切な記述は[1]です。