FP1級過去問題 2017年9月学科試験 問43(改題)

問43

相続時精算課税制度に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 相続時精算課税の適用を受けることができる受贈者は、贈与を受けた年の1月1日において、贈与者の直系卑属である推定相続人または孫であり、かつ、18歳以上でなければならない。
  2. 養親から相続時精算課税を適用して贈与を受けた養子が、養子縁組の解消により、その特定贈与者の養子でなくなった場合においても、養子縁組解消後にその特定贈与者であった者からの贈与により取得した財産については、相続時精算課税が適用される。
  3. 2024年4月に父親から5,000万円の住宅取得等資金の贈与を受け、同月中に免震建築物に該当することが証明された住宅用家屋の取得に係る契約をした者が、相続時精算課税と「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用を初めて受けた場合、ほかに贈与を受けた財産がなければ、納付すべき贈与税額は278万円となる。
  4. 相続時精算課税の特定贈与者が死亡した場合、相続時精算課税適用者がその相続または遺贈により財産を取得しなかったとしても、相続税額の計算上、その被相続人から相続時精算課税を適用して贈与を受けた財産の価額から基礎控除額を控除した後の残額を相続税の課税価格に含める必要がある。

正解 1

問題難易度
肢140.5%
肢26.2%
肢333.6%
肢419.7%

解説

  1. [不適切]。相続時精算課税制度に係る受贈者の要件は次の2つです。
    • 特定贈与者の直系卑属である推定相続人
    • 贈与を受けた年の1月1日において18歳以上
    推定相続人であることは贈与を受けたときに判定され、贈与を受けた年の1月1日において推定相続人あることまでは要求されていません。例えば、1月1日において18歳以上の者を養子とした場合は、年途中に推定相続人となりますが、この養子は相続時精算課税の受贈者の要件を満たします。
  2. 適切。養子縁組の解消により特定贈与者の推定相続人でなくなった場合でも、その特定贈与者からの贈与により取得した財産については、引き続き相続時精算課税が適用されます。
    養親から相続時精算課税制度を適用して贈与を受けた養子が、当該養親との養子縁組解消後に養親であった者からの贈与により取得した財産については、引き続き相続時精算課税制度が適用される。2024.9-43-4
    養親から相続時精算課税を適用して贈与を受けた養子が、養子縁組の解消により、その特定贈与者の養子でなくなった場合、養子縁組解消後にその特定贈与者であった者からの贈与により取得した財産については、相続時精算課税は適用されない。2023.5-44-1
    養親から相続時精算課税を適用して贈与を受けた養子が、養子縁組の解消により、その特定贈与者の養子でなくなった場合、養子縁組解消後にその者からの贈与により取得した財産については、暦年課税が適用される。2021.9-43-4
    養親から相続時精算課税を適用して贈与を受けた養子が、養子縁組の解消により、その特定贈与者の養子でなくなった場合、養子縁組解消後にその特定贈与者であった者からの贈与により取得した財産については、相続時精算課税は適用されない。2020.9-43-1
    相続時精算課税制度の適用を受けていた者が、養子縁組の解消により、特定贈与者の推定相続人でなくなった場合は、養子縁組解消後にその特定贈与者であった者からの贈与により取得した財産については、相続時精算課税制度の適用を受けることができない。2014.9-43-4
  3. 適切。直系尊属からの住宅取得等資金の贈与の特例は、相続時精算課税と併用できます。贈与を受けた年が2022年1月1日~2026年12月31日の場合、省エネ等住宅(耐震・省エネ・バリアフリー住宅)の場合は1,000万円、それ以外の住宅の場合は500万円までの贈与税が非課税となります。免震建築物は耐震住宅に含まれるので1,000万円が非課税となり、相続時精算課税の基礎控除額および特別控除額と合わせると受贈額のうち「1,000万円+110万円+2,500万円=3,610万円」が非課税となります。残る1,390万円には相続時精算課税の一律20%の贈与税率が適用されるので、贈与税額は「1,390万円×20%=278万円」となります。
  4. 適切。相続時精算課税の適用を受けた贈与された財産は、その者が相続または遺贈で財産を取得しなかった場合でも、贈与時の価額から基礎控除額を控除した後の残額を相続税の課税価格に加算する必要があります。
したがって不適切な記述は[1]です。