FP1級過去問題 2024年9月学科試験 問29

問29

「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」(中小企業向け賃上げ促進税制。以下、「本控除」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、本控除の適用を受ける法人は一定の中小企業者等であるものとし、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 雇用者給与等支給額が前事業年度から1%増加した場合、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額を本控除の適用年度の法人税額から控除することができる。
  2. くるみん認定またはえるぼし認定を受けた場合、雇用者給与等支給額の前事業年度からの増加率に応じた税額控除率に10%が加算される。
  3. 本控除により法人税額から控除することができる金額は、その事業年度の法人税額の30%相当額が限度になる。
  4. 控除対象雇用者給与等支給増加額に本控除による税額控除率を乗じて計算した金額のうち、本控除の適用年度の法人税額から控除しきれない金額については、最長で5年にわたって繰り越すことができる。

正解 4

問題難易度
肢113.1%
肢224.7%
肢316.6%
肢445.6%

解説

2024年(令和6年)4月1日から2027年(令和9年)3月31日までが適用年限になっている「賃上げ促進税制」の概要は以下のとおりです。
4/1007.png/image-size:577×363
  1. 不適切。1%ではありません。中小企業者は、雇用者給与等支給額が前事業年度から1.5%増加した場合に、給与増加額の15%相当額の税額控除を受けることができます。
    大企業では、継続雇用者給与等支給額が前事業年度から3%増加した場合、控除対象雇用者給与等支給増加額の25%相当額を税額控除することができる。2023.5-31-1
    中小企業では、雇用者給与等支給額が前事業年度から2%増加した場合、控除対象雇用者給与等支給増加額の30%相当額を税額控除することができる。2023.5-31-2
    本制度は、青色申告法人が、国内雇用者に対する給与等の支給額を前事業年度と比較して一定割合以上増加させた場合、その他の要件を満たすことを条件に最大で当該支給増加額の40%相当額を法人税額から控除することができる制度である。2014.9-32-1
  2. 不適切。中小企業者は、くるみん認定以上またはえるぼし認定2段階目以上を受けた場合に、税額控除率に5%が加算されます。本肢は10%としている点、えるぼし認定としている点の2つで間違っています。
    くるみん認定 … 次世代育成支援対策推進法に基づき、仕事と子育ての両立に関する取組の実施状況が優良である等の一定の要件を満たした事業主を認定する制度
    えるぼし認定 … 女性活躍推進法に基づき、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良である等の一定の要件を満たした事業主を認定する制度
  3. 不適切。30%ではありません。税額控除額は、大企業・中堅企業・中小企業にかかわらず、その事業年度の算出法人税額の20%が限度です。
    税額控除することができる金額は、大企業では、その事業年度の法人税額の10%相当額が限度になり、中小企業では、その事業年度の法人税額の20%相当額が限度になる。2023.5-31-4
  4. [適切]。中小企業者は、賃上げを行った年度の法人税額から控除しきれなかった金額を、翌年以降、最長5年間にわたって繰り越し控除することが可能です。この繰越控除の制度は2024年4月の改正で新設されました。
したがって適切な記述は[4]です。