FP1級過去問題 2025年9月学科試験 問6

問6

老齢厚生年金に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 配偶者の加給年金額が加算される老齢厚生年金を繰り下げて受給したとしても、加給年金額は繰下げによる増額の対象とならない。
  2. 繰下げ支給の申出により増額された老齢厚生年金について、在職老齢年金の仕組みにより支給調整が行われる場合、繰下げ加算額は支給調整の対象とならない。
  3. 厚生年金保険の被保険者期間が240月以上である老齢厚生年金の支給を受けている者が婚姻し、その者によって生計を維持している65歳未満の配偶者を有することとなった場合、婚姻した月の翌月から老齢厚生年金に加給年金額が加算される。
  4. 老齢厚生年金の支給を受けている厚生年金保険の被保険者が退職して再就職しない場合、原則として、退職した月の翌月から老齢厚生年金の年金額が改定される。

正解 3

解説

  1. 適切。加給年金額は、繰下げによる増額の対象外となっています。また繰下げ待機期間に加給年金額は支給されません。
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    配偶者に係る加給年金額が加算された老齢厚生年金の支給を受けている場合に、当該配偶者が老齢基礎年金の繰上げ支給を請求したときは、加給年金額は加算されなくなる。2024.5-6-2
    加給年金額が加算される老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をした場合、老齢厚生年金の額は繰下げ加算額を加算した額とされるが、加給年金額については支給を繰り下げたことによる増額の対象とならない。2021.5-4-3
    加給年金額が加算される老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をした場合、老齢厚生年金の額は繰下げ加算額を加算した額とされるが、加給年金額については繰下げしても増額されない。2016.9-4-4
  2. 適切。老齢厚生年金を繰下げ受給している人が在職支給停止の対象となる場合でも、繰下げによって増額された部分は調整の対象になりません。これは、繰下げ加算が「一定期間年金を受け取らなかったことへの見返り」なので、繰下げ待機期間中の年金と増額分が二重に停止されるのを避けるためです。したがって、在職支給停止により全額が停止される場合でも、経過的加算額と繰下げ加算額は全額が支給されます(厚年法46条1項)。
    繰下げ支給の申出により増額された老齢厚生年金について、在職老齢年金により支給調整が行われる場合、報酬比例部分および繰下げ加算額が支給調整の対象となる。2024.1-5-4
  3. [不適切]。加給年金額は、厚生年金の被保険者期間を240月以上有する者が、老齢厚生年金の受給権を取得した時点において、生計を維持している一定の配偶者または子がいるときに支給対象となります。したがって、受給開始後に新たに65歳未満の配偶者を有することになっても、加給年金額は支給されません(厚年法44条)。
    これに対して、障害厚生年金の配偶者加給年金は、受給開始後に婚姻して配偶者を有することとなった場合でも支給対象となります。両者の違いに注意しましょう。
    ※受給権を取得したときに被保険者期間240月未満であった場合は、240月となった時点となります。
    厚生年金保険の被保険者期間が240月以上である老齢厚生年金の支給を受けている者が婚姻し、その者によって生計を維持している65歳未満の配偶者を有することとなった場合、婚姻した月の翌月から老齢厚生年金に加給年金額が加算される。2024.5-6-1
    障害等級2級に該当して障害厚生年金の支給を受けている者が婚姻し、所定の要件を満たす配偶者を有するに至った場合は、所定の手続により、その至った日の属する月の翌月分から当該受給権者の障害厚生年金に加給年金額が加算される。2021.5-5-3
    老齢厚生年金を受給している者(厚生年金保険の被保険者期間が240月以上である者)が婚姻し、その者によって生計を維持している65歳未満の配偶者を有することとなった場合は、婚姻した月の翌月からその者の老齢厚生年金に加給年金額が加算される。2016.1-4-1
  4. 適切。厚生年金の被保険者として勤務しながら老齢厚生年金を受給している人が、退職等により被保険者資格を喪失し、その後被保険者とならずに1カ月が経過したときは、退職日までの加入実績により年金額が再計算され、資格を喪失した月の翌月(退職月の翌月)から年金額が改定されます。これが「退職改定」です(厚年法44条3項)。
したがって不適切な記述は[3]です。