不動産の相続対策(全14問中13問目)

No.13

「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
2014年9月試験 問49
  1. 被相続人が発行済株式総数の全部を有する法人の事業の用に供されていた宅地(被相続人が所有)を被相続人の長男が相続により取得した場合、長男が相続税の申告期限までに総議決権数の50%超の議決権を有すること、かつ、当該法人の役員であることを要件に、当該宅地は「特定同族会社事業用宅地等」として本特例の適用を受けることができる。
  2. 被相続人の居住の用に供されていた宅地を被相続人と同居していた長男が相続により取得し、長男が相続税の申告期限までに当該宅地を売却した場合、「特定居住用宅地等」として本特例の適用を受けることができない。
  3. 「特定居住用宅地等」を取得した場合、当該宅地に係る本特例の適用対象面積は最大330㎡である。
  4. 「特定居住用宅地等」と「特定事業用宅地等」の2つの宅地を取得した場合、適用対象面積の調整はせず、それぞれの適用対象面積の限度まで本特例の適用を受けることができる。

正解 1

問題難易度
肢147.2%
肢223.1%
肢36.8%
肢422.9%

解説

  1. [不適切]。特定同族会社事業用宅地等の取得者の要件は以下の通りです。
    49_1.png./image-size:521×136
    取得者は被相続人の親族であり、相続税の申告期限時点で当該法人の役員である必要がありますが、議決権の保有割合は要件ではありません。
    被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地を相続により取得し、貸付事業を引き継いだ被相続人の配偶者が、当該宅地を相続税の申告期限までに売却した場合、当該宅地は貸付事業用宅地等として本特例の適用を受けることができない。2017.1-49-2
  2. 適切。特定居住用宅地の取得者ごとの要件は以下のようになっています。
    49_2.png./image-size:443×240
    取得者が同居親族である場合には、相続税の申告期限まで所有権を有していることが要件となっています。よって、売却した場合には適用対象外です。
    被相続人であるAさんの居住の用に供されていた宅地を、相続開始の直前においてAさんと同居していたAさんの子Bさんが相続により取得した場合、子Bさんが相続開始前3年以内に子Bさんまたは子Bさんの配偶者の所有する家屋に居住したことがあったとしても、当該宅地は特定居住用宅地等として本特例の適用を受けることができる。2022.9-49-1
    被相続人の居住の用に供されていた宅地を被相続人の親族でない者が遺贈により取得した場合、その者が被相続人と同居していた等の所定の要件を満たせば、当該宅地は特定居住用宅地等として本特例の適用を受けることができる。2021.9-49-2
    被相続人の居住の用に供されていた宅地を被相続人と同居していた被相続人の子が相続により取得した場合であっても、その子が相続開始前3年以内に国内にあるその者またはその者の配偶者の所有する家屋に居住したことがあれば、当該宅地は特定居住用宅地等として本特例の適用を受けることはできない。2021.9-49-3
    被相続人の事業の用に供されていた宅地を被相続人の配偶者が相続により取得した場合、その配偶者が当該宅地を相続税の申告期限までに売却したとしても、当該宅地は特定事業用宅地等として本特例の適用を受けることができる。2020.9-49-1
    被相続人の居住の用に供されていた宅地を被相続人の親族でない者が遺贈により取得した場合、その者が相続開始の直前において被相続人と同居していたときは、当該宅地は特定居住用宅地等として本特例の適用を受けることができる。2020.9-49-2
    被相続人の貸付の用に供されていた宅地を被相続人の親族が相続により取得した場合、その宅地が建物または構築物の敷地の用に供されているものでなければ、当該宅地は貸付事業用宅地等として本特例の適用を受けることはできない。2020.9-49-4
    被相続人の居住の用に供されていた宅地を被相続人の配偶者が相続により取得した場合、配偶者が当該宅地を相続税の申告期限までに売却したとしても、当該宅地は特定居住用宅地等として本特例の適用を受けることができる。2018.1-49-2
    被相続人の居住の用に供されていた宅地を被相続人の子が相続により取得した場合、その子が相続の開始の直前において被相続人と同居していなければ、当該宅地は特定居住用宅地等として本特例の適用を受けることはできない。2018.1-49-3
    被相続人の事業の用に供されていた宅地を配偶者が相続により取得し、その配偶者が相続税の申告期限まで事業を継続しなかった、あるいは当該宅地を売却した場合、当該宅地は「特定事業用宅地等」として本特例の適用を受けることができない。2014.1-49-2
  3. 適切。特定居住用宅地等の限度面積は330㎡です。平成26年12月31日以前は240㎡が限度でした。
    49_3.png./image-size:478×176
    「特定居住用宅地等」を取得した場合、当該宅地に係る本特例の適用対象面積は330㎡である。2014.1-49-3
  4. 適切。特定居住用宅地等と特定事業用宅地等は合わせて400㎡まで、特定居住用宅地等は330㎡が限度面積です。2つを併用すると調整なく、730㎡まで適用を受けられます。
    特定居住用宅地等(300㎡)、特定事業用宅地等(430㎡)の2つの宅地を相続により取得した場合、2つの宅地の面積の合計が730㎡以下となるため、2つの宅地のすべての面積について本特例の適用を受けることができる。2021.9-49-1
    特定居住用宅地等(200㎡)、特定事業用宅地等(200㎡)、特定同族会社事業用宅地等(200㎡)の3つの宅地を相続により取得した場合、3つの宅地のすべての面積について本特例の適用を受けることができる。2018.1-49-1
    特定居住用宅地等(300㎡)、特定事業用宅地等(200㎡)、特定同族会社事業用宅地等(200㎡)の3つの宅地を相続により取得した場合、3つの宅地のすべての面積について本特例の適用を受けることができる。2017.1-49-3
    「特定居住用宅地等(280㎡)」と「特定事業用宅地等(440㎡)」を取得した場合、適用対象面積の合計が730㎡以下となるため、両方の宅地のすべての面積について、本特例の適用を受けることができる。2015.1-49-3
したがって不適切な記述は[1]です。