FP1級過去問題 2023年9月学科試験 問49

問49

取引相場のない株式の評価方法における純資産価額方式に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  1. 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算上、課税時期の属する事業年度に係る法人税額や消費税額のうち、その事業年度開始の日から課税時期までの期間に対応する金額で未払いのものは負債として計上することはできない。
  2. 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算上、評価会社の株式を所有する役員が死亡し、その相続人に支給した弔慰金で、みなし相続財産とならないものは、負債として計上することはできない。
  3. 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算上、評価会社が所有する課税時期前3年以内に取得した土地の相続税評価額は、原則として、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
  4. 課税時期において評価会社が有する資産の合計額(相続税評価額)に占める株式等の価額の合計額(相続税評価額)の割合が50%以上である場合、同族株主が取得した当該会社の株式は、会社の規模にかかわらず、原則として純資産価額方式により評価する。

正解 1

問題難易度
肢139.8%
肢219.9%
肢316.4%
肢423.9%

解説

  1. [不適切]。期中の利益に対応する未払いの税金は負債として計上できます。課税時期の属する事業年度に係る法人税額や消費税額、事業税額、住民税額のうち、その事業年度開始の日から課税時期までの期間に対応する金額で未払いのものは、会計帳簿上で負債として記載がなくても、純資産価額の計算上の負債として計上します(財評通186)。
  2. 適切。評価会社が支払った弔慰金は、相続税法上のみなし相続財産となる退職手当金等に該当する金額に限り、負債に該当するものとして取り扱われます。弔慰金は、業務上の死亡であれば普通給与の3年分、業務外の死亡であれば普通給与の6か月分までは非課税財産となり、それを超える部分は退職手当金として扱われます。弔慰金のうち、負債として計上できるのは、この退職手当金として扱われる(非課税額を超える)部分だけということです。
  3. 適切。純資産価額を計算する場合、課税時期の3年以内に法人が取得した家屋や土地の評価は、相続税評価額ではなく課税時期における通常の取引価額によることとされています。不動産は現金よりも低く評価されることを利用して、評価時期直前に資産を不動産に移して不当に評価額を下げる行為を防止するためです(財評通185)。
  4. 適切。課税時期において評価会社が有する資産の合計額に占める株式等の価額の合計額の割合が50%以上である評価会社は、「株式等保有特定会社」と呼ばれ「特定の評価会社」に区分されます。同族株主が取得した「特定の評価会社」の株式は、会社の規模にかかわらず、原則として純資産価額方式により評価額を求めます(財評通189-3)。
したがって不適切な記述は[1]です。