FP1級過去問題 2024年9月学科試験 問45

問45

民法における遺言に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 公正証書遺言の遺言者が、公正証書遺言の正本を故意に破棄したときは、その破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされる。
  2. 遺言者は、遺言により1人または複数人の遺言執行者を指定し、またはその指定を第三者に委託することができるが、未成年者および破産者は遺言執行者となることができない。
  3. 遺言者の相続開始前に受遺者が死亡していた場合に、受遺者に子があるときは、遺言者がその遺言に別段の意思を表示していない限り、原則として、その子が受遺者たる地位を承継する。
  4. 遺贈義務者が、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認または放棄をすべき旨の催告をした場合において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈の放棄をしたものとみなされる。

正解 2

解説

  1. 不適切。公正証書遺言には、原本、正本、謄本があり、正本は原本と同じ効力をもつ写しです(法務局や金融機関に提出可能)。正本を破棄しても、原本が公証役場に保管されているため、遺言を撤回したことにはなりません。なお、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、破棄した部分については遺言を撤回したものとみなされます。
    公正証書遺言を作成していた遺言者が、公正証書遺言の内容に抵触する自筆証書遺言を作成した場合、その抵触する部分については、自筆証書遺言で公正証書遺言を撤回したものとみなされる。2023.1-44-3
    公正証書遺言は、原本が公証役場に保管されており、遺言者が公正証書遺言の正本を破棄したとしても、遺言を撤回したものとはみなされない。2022.5-44-4
    公正証書遺言の遺言者が、公正証書遺言の正本を故意に破棄したときは、その破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされる。2019.1-44-3
    遺言者が公正証書による遺言書を作成した場合、その遺言を自筆証書遺言により撤回することができる。2014.9-44-2
  2. [適切]。遺言者は、遺言により個人・法人問わず、1人または複数人の遺言執行者を指定することができ、また、家庭裁判所に選任の申立を行うなどその指定を第三者に委託することもできます(民法1006条)。遺言を適切に実現する能力の観点から、未成年者および破産者は遺言執行者となることはできません(民法1009条)。
    遺言者は、遺言により1人または複数人の遺言執行者を指定することができ、その指定を第三者に委託することもできるが、未成年者および破産者は遺言執行者となることができない。2023.1-44-4
  3. 不適切。遺言者の死亡以前に受遺者が死亡していたときは、推定相続人の代襲者その他の者に相続させる意思を有していた等の特段の事情のない限り、その遺贈の効力を生じません(民法923条、最判平23.2.22)。よって、受遺者の地位は当然には受遺者の子に承継されません。
    遺言者の相続開始前に受遺者が死亡していた場合に、受遺者に子があるときは、遺言者がその遺言に別段の意思を表示していない限り、原則として、その子が受遺者たる地位を承継する。2020.9-45-1
  4. 不適切。放棄にはなりません。遺贈の履行義務を負う者は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認または放棄をすべき旨の催告をすることができます。この期間内に受遺者がその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなされます(民法987条)。
    遺贈義務者が、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認または放棄をすべき旨の催告をした場合において、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈の放棄をしたものとみなされる。2020.9-45-4
したがって適切な記述は[2]です。