FP1級過去問題 2025年1月学科試験 問5

問5

公的年金の遺族給付に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 国民年金の第1号被保険者である夫(45歳)が死亡し、その夫と10年以上継続して婚姻関係にあり、かつ、その夫によって生計を維持されていた妻(49歳)がいる場合、妻は60歳に達した日の属する月の翌月から65歳に達した日の属する月まで寡婦年金を受給することができる。
  2. 国民年金の第1号被保険者である夫(48歳)の死亡により妻(45歳)が取得した遺族基礎年金の受給権については、妻が夫の父親(75歳)と養子縁組をした場合であっても消滅しない。
  3. 厚生年金保険の被保険者である妻(45歳)が死亡し、その妻によって生計を維持されていた遺族が夫(42歳)と子(15歳)の2人である場合、遺族基礎年金および遺族厚生年金は夫に支給される。
  4. 厚生年金保険の被保険者である者(40歳)が死亡し、その者によって生計を維持されていた遺族が父親(61歳)と母親(62歳)の2人である場合、遺族厚生年金は、受給権者が1人である場合に算定される額を2で除して得た額が父親と母親にそれぞれ支給される。

正解 3

問題難易度
肢111.4%
肢212.1%
肢362.3%
肢414.2%

解説

  1. 適切。寡婦年金は、第1号被保険者としての保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年以上ある人が、老齢基礎年金または障害基礎年金を受け取らずに死亡した場合に、その夫に生計を維持されていた婚姻関係(事実婚関係含む)10年以上の妻に対して、60歳から65歳到達月まで支給されます(国年法49条1項)。
    国民年金の第1号被保険者期間に係る保険料納付済期間が10年以上ある夫(62歳)が、老齢基礎年金または障害基礎年金の支給を受けることなく死亡した場合、夫との婚姻期間が10年以上あり、生計を維持されていた妻(58歳)は、夫が死亡した日の属する月の翌月から5年間、寡婦年金を受給することができる。2022.5-6-3
  2. 適切。遺族基礎年金の受給権者が結婚したときや養子となったときは、遺族基礎年金の受給権は消滅するのが原則です。ただし、例外的に直系血族・直系姻族の養子となった場合は除かれます。夫の父親は直系姻族に当たるため、養子縁組をしても受給権は消滅しません(国年法40条1項)。
  3. [不適切]。遺族基礎年金の受給権者は、子または子のある配偶者なので、子(15歳)のいる夫は受給することができます。一方、遺族厚生年金を受給できる遺族の範囲は、妻・子・孫・夫・父母・祖父母ですが、夫・父母・祖父母には被保険者の死亡時に55歳以上という制限があります。よって、夫(42歳)は遺族厚生年金を受給することができず、子が遺族厚生年金を受給することになります。
    厚生年金保険の被保険者で、その被保険者期間が25年6カ月である妻(49歳)が被保険者期間中に死亡し、その妻に生計を維持されていた遺族が夫(50歳)と子(14歳)の2人である場合、遺族基礎年金および遺族厚生年金は夫に支給される。2022.5-6-1
    厚生年金保険の被保険者で、その被保険者期間が26年6カ月である夫(47歳)が被保険者期間中に死亡し、その夫に生計を維持されていた遺族が妻(45歳)のみである場合、その妻が受給する遺族厚生年金には、妻が65歳になるまでは中高齢寡婦加算額が加算され、65歳以後は経過的寡婦加算額が加算される。2022.5-6-2
    被保険者であるCさん(45歳)と同居して生計維持関係にあった者が夫(50歳)と長女(21歳)である場合、夫および長女は遺族厚生年金の受給権を取得することはできない。2022.1-5-3
    厚生年金保険の被保険者で、その被保険者期間が19年6カ月である夫(43歳)が被保険者期間中に死亡し、その夫に生計を維持されていた遺族が妻(43歳)のみである場合、その妻が受給する遺族厚生年金には中高齢寡婦加算額が加算される。2021.9-5-1
    厚生年金保険の被保険者で、その被保険者期間が30年6カ月である妻(52歳)が被保険者期間中に死亡し、その妻に生計を維持されていた遺族が夫(52歳)と子(16歳)の2人である場合、遺族基礎年金は夫に支給され、遺族厚生年金は子に支給される。2021.9-5-3
    10年前から国民年金の第3号被保険者であった妻が死亡し、妻と生計を同じくしていた夫(40歳)と子(10歳)がいる場合に、夫の前年の収入が年額850万円未満であるときは、夫に遺族基礎年金が支給される。2021.1-4-1
    10年前から厚生年金保険の被保険者であった妻が死亡し、妻と生計を同じくしていた夫(50歳)と子(22歳)がいる場合に、夫の前年の収入が年額850万円未満であるときは、夫に遺族厚生年金が支給される。2021.1-4-2
    20年前から国民年金の第1号被保険者であった夫が死亡し、夫と生計を同じくしていた妻(40歳)と子(10歳)がいる場合に、妻の前年の収入が年額850万円未満であるときは、妻に遺族基礎年金と死亡一時金が支給される。2021.1-4-3
    厚生年金保険の被保険者であり、その被保険者期間が192月である夫(38歳)が死亡し、その夫に生計を維持されていた遺族が妻(42歳)のみである場合、その妻が受給する遺族厚生年金には中高齢寡婦加算額が加算される。2018.1-3-1
    厚生年金保険の被保険者であり、その被保険者期間が384月である妻(50歳)が死亡し、その妻に生計を維持されていた遺族が夫(50歳)と子(15歳)の2人である場合、夫は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給することができる。2018.1-3-2
  4. 適切。遺族厚生年金について同順位の受給権者が2人以上いるときは、各人に支給される額は、算定された遺族厚生年金の額をその頭数で割った額となります。よって、受給権者が父親と母親の2人であれば、2で割った額がそれぞれに支給されます(厚年法60条2項)。
    被保険者であるDさん(50歳)と同居して生計維持関係にあった者が父(75歳)と母(75歳)である場合、双方が遺族厚生年金の受給権を取得し、それぞれに支給される遺族厚生年金の額は、受給権者が1人である場合に算定される額を2で除して得た額となる。2022.1-5-4
したがって不適切な記述は[3]です。