FP1級過去問題 2025年1月学科試験 問36

問36

借地借家法における定期建物賃貸借契約(定期借家契約)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、賃貸人および賃借人は、いずれも宅地建物取引業者ではない個人であるものとし、記載のない事項については考慮しないものとする。
  1. 定期建物賃貸借契約をする際は、賃貸人は、あらかじめ、賃借人に対し、契約の更新がなく、期間の満了により建物の賃貸借が終了することについて説明しなければならず、賃貸人がその説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは無効となる。
  2. 定期建物賃貸借契約において、その賃料が近傍同種の建物の賃料に比較して不相当となっても、賃貸借期間中は賃料の増減額をしない旨の特約をした場合、その特約は無効となる。
  3. 定期建物賃貸借契約の期間が2年である場合に、賃貸人が期間の満了の10カ月前に、賃借人に対し、期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしたときは、その終了を賃借人に対抗することができる。
  4. 自己の居住の用に供するために賃借している建物(床面積200㎡未満)の定期建物賃貸借契約において、転勤により建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、賃借人は、解約の申入れの日から1カ月後に建物の賃貸借を終了させることができる。

正解 2

問題難易度
肢111.1%
肢260.7%
肢317.1%
肢411.1%

解説

  1. 適切。定期借家契約をしようとするときは、貸主は、あらかじめ借主に対し、契約の更新がなく期間満了により終了する旨を記載した書面を交付して、説明しなければなりません。この説明・交付がない場合、契約の更新がない定めは無効となります(借地借家法38条3項・5項)。
    定期借家契約を締結する場合、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付(電磁的方法による場合を含む)して説明しなければならない。2021.9-35-2
    定期借家契約を締結する場合、賃貸人は、あらかじめ、賃借人に対し、建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付(電磁的方法による場合を含む)して説明しなければならない。2021.5-36-3
    定期借家契約を締結する場合、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付(電磁的方法による場合を含む)して説明しなければならない。2020.1-35-3
  2. [不適切]。定期借家契約で借賃の改定に係る定めがあるときには、借賃増減請求権の規定は適用されません。普通借家契約では無効である「賃料を減額しない特約」も、定期借家契約では有効に定めることができます(借地借家法38条9項)。
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    普通借家契約において、賃借人が建物に付加した造作について賃貸借期間満了時に賃貸人に対して買取りを請求しない旨の特約をした場合、その特約は無効となる。2025.9-36-1
    普通借家契約において、その賃料が近傍同種の建物の賃料に比較して不相当となっても、賃貸借期間中は賃料の増額をしない旨の特約をした場合、その特約は有効となる。2025.9-36-2
  3. 適切。契約期間が1年以上の定期借家契約では、貸主は、期間満了の1年前から6カ月前までの間に、借主に対して賃貸借が終了する旨の通知をしなければなりません(借地借家法38条6項)。期間満了の10カ月前は上記の通知期間内なので、満了時に終了を対抗することができます。
    定期借家契約の期間が2年である場合に、賃貸人が期間の満了の10カ月前に、賃借人に対し、期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしたときは、その終了を賃借人に対抗することができる。2025.9-36-4
    定期建物賃貸借契約の期間が1年である場合、賃貸人が当該契約日の8カ月後に、初めて賃借人に期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしたときは、通知の日から4カ月経過後に契約の終了を賃借人に対抗することができる。2023.1-35-3
    定期建物賃貸借契約は、その契約期間の長短にかかわらず、賃借人に対して、期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をする必要はなく、その期間が満了すれば、当然に建物の賃貸借は終了し、賃借人は退去しなければならない。2022.1-35-3
    定期借家契約においては、賃貸借期間の満了により契約は確定的に終了するため、原則として、賃貸人は、期間満了前に賃借人に対して、期間満了により契約が終了する旨の通知をする必要はない。2014.1-41-4
  4. 適切。床面積200㎡未満の居住用建物を目的とする定期借家契約では、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、生活の本拠として使用することが困難になった場合、賃借人は中途解約を申し入れることができます。この場合、解約申入れから1カ月後に契約終了となります(借地借家法38条7項)。
    自己の居住の用に供するために賃借している建物(床面積200㎡未満)の定期建物賃貸借契約において、転勤により建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、賃借人は、解約の申入れの日から1カ月後に当該賃貸借を終了させることができる。2022.5-36-4
    自己の居住の用に供するために賃借している建物(床面積が200㎡未満)の定期建物賃貸借契約において、親の介護により建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、賃借人は、解約の申入れの日から3カ月後に当該賃貸借を終了させることができる。2022.1-35-4
    定期借家契約において、自己の居住の用に供する床面積200㎡未満の建物を賃借している賃借人が、転勤や親族の介護等のやむを得ない事情により当該建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となった場合、賃借人は、当該建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。2021.5-36-4
    定期借家契約において、自己の居住の用に供する床面積200㎡未満の建物を賃借している賃借人が、転勤や親族の介護等のやむを得ない事情により当該建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となった場合、賃借人は、当該賃貸借契約を中途解約することができる。2018.1-36-3
したがって不適切な記述は[2]です。