FP1級過去問題 2014年1月学科試験 問7(改題)

問7

老齢厚生年金の繰下げ支給に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 65歳以後も在職するAさんが、70歳0カ月で老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をした場合、繰下げ支給の増額の対象となる老齢厚生年金の年金額は、在職老齢年金の支給調整前の額である。
  2. 65歳到達時に老齢厚生年金の受給権を有するBさんが、72歳0カ月で老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をした場合の増額率は、58.8%である。
  3. 障害基礎年金のみを受給しているCさんが、65歳到達時に老齢厚生年金の受給権を取得した場合、老齢厚生年金の支給を繰り下げることはできない。
  4. 老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をしたDさんに加給年金額の対象となる配偶者がいる場合、加給年金額は、老齢厚生年金の繰下げによる増額率と同率で増額される。

正解 2

問題難易度
肢114.8%
肢268.0%
肢310.1%
肢47.1%

解説

  1. 不適切。老齢厚生年金の受給権者が65歳以降も厚生年金の被保険者として勤務する場合、在職老齢年金の仕組みにより老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になることがあります。この支給停止になった部分は繰下げ支給による増額の対象となりません(厚年法44条の3第4項)。つまり、増額の対象となるのは在職老齢年金による支給調整の額となります。
  2. [適切]。老齢基礎年金でも老齢厚生年金でも、最大で75歳まで繰下げすることができるようになりました。繰下げ支給に係る増額率は1月につき0.7%ですから、7年(=84月)繰り下げたときの増額率は「0.7%×84月=58.8%」です。
    65歳到達時に老齢基礎年金の受給権を有していた者が、70歳に達するまでに当該老齢基礎年金を請求しなかった場合は、70歳到達時、繰下げ支給の申出をせず、5年分の年金を一括して受給することができる。2021.9-4-4
  3. 不適切。他の年金給付の受給権者であるときは、繰下げ支給の申出ができないことがあります。繰下げできない場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金で少し異なります。
    老齢基礎年金
    老齢・退職以外を支給事由とする年金給付を受けている
    老齢厚生年金
    障害基礎年金または老齢・退職以外を支給事由とする年金給付を受けている
    老齢厚生年金は、障害基礎年金の受給権者であっても繰下げ支給の申出をすることができるので、本肢は誤りです。
    1958年1月28日生まれの遺族厚生年金を受給している女性が、65歳に達して老齢基礎年金の受給権を取得する場合、67歳に達した月に老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をすることができる。2023.5-5-4
    障害基礎年金の受給権者が65歳に達して老齢厚生年金の受給権を取得した場合、当該受給権者は、老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をすることができず、65歳から障害基礎年金と老齢厚生年金を受給することになる。2021.5-4-1
    遺族厚生年金の受給権者が、65歳到達日に老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給権を取得した場合、老齢基礎年金に加えて、遺族厚生年金としてその3分の2相当額と老齢厚生年金としてその2分の1相当額を受給することができる。2021.1-5-4
    65歳到達時に老齢基礎年金の受給権を取得し、70歳に達する前に当該老齢基礎年金を請求していなかった者は、70歳到達時、5年分の年金を一括して受給するか繰下げ支給の申出をするかを選択することができる。2020.1-4-4
    66歳到達時に老齢基礎年金の受給資格期間を満たし、その受給権を取得した者が、70歳到達日に老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をした場合、老齢基礎年金の増額率は33.6%である。2019.9-4-2
    障害基礎年金を受給している者が65歳到達時に老齢厚生年金の受給権を取得した場合、老齢厚生年金の支給を繰り下げることはできない。2019.9-4-3
    障害基礎年金の受給権者が65歳に達して老齢厚生年金の受給権を取得した場合、当該受給権者は、老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をすることができず、65歳から障害基礎年金と老齢厚生年金を受給することになる。2016.9-4-2
    遺族厚生年金の受給権者が特別支給の老齢厚生年金の受給権を取得した場合は、いずれか一方の年金を選択して受給することになる。2015.9-5-1
    障害基礎年金の受給権者が65歳到達日に老齢厚生年金の受給権を取得した場合は、障害基礎年金と老齢厚生年金の組合せによる年金の受給を選択することができる。2015.9-5-2
  4. 不適切。加給年金額と振替加算額は繰下げによる増額の対象となりません。
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したがって適切な記述は[2]です。