FP1級過去問題 2017年9月学科試験 問47

問47

「配偶者に対する相続税額の軽減」(以下、「本制度」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、相続財産には仮装または隠蔽されていた財産は含まれておらず、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 相続により財産を取得した被相続人の配偶者が制限納税義務者に該当する場合であっても、本制度の適用を受けることができる。
  2. 相続により財産を取得した被相続人の配偶者が、被相続人の血族との親戚関係を終了させる「姻族関係終了届」を相続税の申告期限までに提出した場合であっても、本制度の適用を受けることができる。
  3. 相続の放棄をした被相続人の配偶者が、契約者(=保険料負担者)および被保険者を被相続人とする生命保険契約の死亡保険金を受け取るなど、遺贈により取得した財産があるときは、本制度の適用を受けることができる。
  4. 相続人が被相続人の配偶者と子の2人である場合に、子が相続の放棄をして配偶者が相続財産のすべてを相続により取得し、本制度の適用を受けたときは、相続により取得した財産額の多寡にかかわらず、納付すべき相続税額は算出されない。

正解 4

問題難易度
肢13.8%
肢26.3%
肢320.6%
肢469.3%

解説

  1. 適切。制限納税義務者とは、相続や遺贈が発生した時点および相続・遺贈が発生した時点からさかのぼって10年以内に国内に住所がない人のことを指しますが、配偶者に対する相続税額の軽減の規定は、財産の取得者が無制限納税義務者・制限納税義務者に該当する場合であっても適用を受けることができます。
  2. 適切。「姻族関係終了届」を提出することにより配偶者の血族との姻戚関係を解消することができますが、相続時に被相続人と婚姻していた事実が消えるわけではないので「配偶者に対する相続税額の軽減」の適用の有無とは関係がありません。よって、相続税の申告期限までに当該届を提出した場合でも「配偶者に対する相続税額の軽減」の適用を受けることができます。
  3. 適切。「配偶者に対する相続税額の軽減」は、配偶者が相続を放棄した場合であっても適用を受けることができます。よって、死亡保険金や死亡退職金などのみなし相続財産を受け取ったときに、本制度を利用すれば規定額までは税額は算出されません。
    契約者(=保険料負担者)および被保険者を被相続人、死亡保険金受取人を被相続人の子とする終身保険において、子が相続の放棄をした場合、当該死亡保険金については、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることができない。2022.5-46-1
    契約者(=保険料負担者)および被保険者を被相続人、死亡保険金受取人を被相続人の子とする終身保険契約において、子が相続の放棄をした場合であっても、当該死亡保険金については、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることができる。2021.9-48-1
    契約者(=保険料負担者)および被保険者を被相続人、死亡保険金受取人を被相続人の子とする終身保険契約において、子が死亡保険金のほかに、払戻しによる前納保険料を受け取った場合、当該前納保険料は相続税の課税対象となる。2021.9-48-2
    契約者(=保険料負担者)および被保険者を被相続人とする生命保険契約の死亡保険金受取人となっている相続人に対し、死亡保険金とともに支払われる積立配当金の額は、相続税の課税対象となり、死亡保険金の非課税金額の規定が適用される。2016.9-46-1
    契約者(=保険料負担者)および被保険者を被相続人とする生命保険契約の死亡保険金受取人となっている相続人が、遺産分割により死亡保険金以外の財産をいっさい取得しなかった場合、その者が受け取る当該保険金については、死亡保険金の非課税金額の規定は適用されない。2016.9-46-4
    契約者(=保険料負担者)および被保険者が被相続人である生命保険契約において、相続の放棄をした者が受け取った死亡保険金は、相続税の課税対象となる。2015.10-46-1
    契約者(=保険料負担者)および被保険者が被相続人である生命保険契約において、被相続人の子で相続の放棄をした者が受け取った死亡保険金は、保険金の非課税金額の規定の適用を受けることができない。2014.1-47-1
  4. [不適切]。相続税法上は相続の放棄があったとしても、その放棄がなかったものとして税額等の計算を行うので、配偶者の法定相続分は1/2となります。本制度は、配偶者が相続により取得した財産が①法定相続分と②1億6,000万円のいずれか多い額までは相続税が算出されないとするものですが、すべての財産を取得した場合、明らかに法定相続分1/2の方は超えるため、取得した財産額が1億6,000万円を超えていれば納付税額が生じます。
したがって不適切な記述は[4]です。